大須観音での参拝の後、彼が向かったのは大須郊外にあるレコード店「greatest hits」
名古屋で20年以上続く老舗レコード店である同店は、ジャンルや年代にとらわれず、ラインナップも豊富で、CDやDVDなどレコード以外の商品も多い。
「greatest hits」では年数回の特大セールを開催しており、特に店外にレコードが陳列される通称「外レコ」では1枚110円からレコードが購入できる。彼もこの店の常連であり外レコ開催日には10枚単位でレコードを購入することも。
彼がレコードを購入するようになったのは3年前、社会人になり熱中できる趣味を探していた。
元々音楽が好きだったこともあり、彼が学生時代から愛するコモドアーズ「Nightshift」と簡易的にレコードを聞くことができるプレイヤーを購入した。
今までデジタルでしか音楽を聴いたことがなかった彼にとって、初めてのレコード体験は特別なものだった。
サブスク全盛期のこの時代、音楽を聴くためにわざわざ大きなジャケットから盤を取り出し、慎重に針を落とす。そこから感じられる体験に彼は魅了された。
そこから彼は名古屋のサウンドバーを巡り、週末はDJとして活動する。
AORなどの80年代のロックやソウル、ポップスを好み、クロージングタイムにはボビー・コールドウェルの「What You Won’t Do For Love」をよくかける。
彼のどこか穏やかで情緒や風情を重んじる性格によく合ったクロージングナンバーだ。
90年代を代表するHIPHOPレーベルである「MURDER INC」のレコードを手に取り、購入する。HIPHOPを愛する友人へのプレゼントだそう。
彼にとっての久しぶりの休日も終わりに差し掛かる。
名古屋での彼の生活。愛するものに囲まれながら、ゆっくりと時間の流れを楽しむ。
日は暮れ始めている。愛車に乗り込み、この日のクロージングナンバー、奇妙礼太郎の「オー・シャンゼリーゼ」が車内を包む。
彼の愛車はタイムマシンのように名古屋での時をゆっくりと駈けていく。